今年は、8月の台風10号・9月の15号と大きな台風が立て続けに上陸し、甚大な被害を及ぼしました。被害に遭われた皆様には、心よりお見舞い申し上げます。
さて、台風によって被害を被った場合、被害者は加害者に損害賠償請求ができるのでしょうか。たとえば、台風の強風によって隣家の屋根が飛んできて自宅が破損した場合に、その隣人に修理費用などの損害賠償を請求できるかという問題です。
この場合、問題となるのが民法の「工作物責任」です。 民法717条1項には、「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。」と規定されています。「土地の工作物」というのは、土地の上に人工的に設置された物を意味し、建物がその代表例です。「瑕疵」とは、本来の安全性を備えていないこと(欠陥)を意味します。
おおざっぱに要約すると、「土地の工作物に本来の安全性が備わっていないことによって他人に被害が生じた場合には、それを管理している人は、被害者に対して損害賠償をする責任がある。」という規定になります。
これを先ほどの例に当てはめると、このようになります。たとえば、あちこちの家の屋根が吹き飛んでしまうほどの強風によって屋根が飛んだのであれば、天災によるものですから、被害者は隣人に対して損害賠償請求できません。他方、ほとんどの家の屋根は無事だったのに、隣家の屋根が老朽化していてすぐに吹き飛んでしまうような危険な状態で放置されていたような場合には、隣家の屋根は「本来の安全性」を備えていないことになるので、被害者は隣人に対して修理費用を請求できることになります。
今回の台風15号では市原市のゴルフ練習場の鉄柱とネットが倒れ、隣家がその下敷きになるという被害が生じました。ゴルフ場練習場の鉄柱とネットも、「土地の工作物」に該当するので、「工作物責任」が問題になります。
台風15号は、一部の地域で観測史上最大の瞬間風速を記録しました。そうすると、まさに天災ですから、下敷きになった家の所有者はゴルフ練習場に対して修理費用を請求できないという結論になりそうです。とはいえ、今回の台風であちこちの鉄柱が倒れたわけではありません。また、他の多くのゴルフ練習場では強風に備えて、ネットを下ろせる構造になっているようですが、このゴルフ練習場はそうなっていなかったようです。
この件では、この鉄柱やネットが「本来の安全性」を備えていたかどうかが問題になるわけですが、専門家の間でも意見が分かれそうですから、解決までにはかなりの時間がかかりそうですね。
当事務所では、台風の影響で被害を受けた、あるいは被害を与えてしまったといった案件も積極的に取り扱っておりますので、是非ご相談ください。

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