請負代金を支払ってもらえない場合

請負代金は、売買代金などの他の契約の代金に比べて、不払・未払が多く発生します。その原因は様々ですが、主として以下の4点が指摘できます。

  1. 代金額が大きいにもかかわらず、契約書を締結していない、あるいはおおざっぱな契約書しか存在しないことが多い。
  2. 代金が完成後の後払いとされているケースが多い。
  3. 追加工事や変更工事が発生するなど契約内容の途中変更が多い。
  4. 完成後に瑕疵や未工事が発見されることが多い。

そこで、以下に請負代金が不払・未払となっている場合の対処方法をご説明します。

 

1 工事期間中に不払・未払が発生した場合の対応

工事期間中に中間金などの不払が発生した場合ですが、不払の理由を確認することが先決です。単に発注者の資金繰りの問題なのか、あるいは工事内容に不満があるのか、工事に瑕疵があると主張しているのかなどについて確認します。

そして、不払の原因が資金繰りにある場合には、発注者に対して支払時期を確認し、覚書を作成してもらうなど、書面で支払時期を確約してもらう必要があります。この際、この書面には、支払時期を再度守ることができなかった場合に請負業者が工事を中断・中止できるとの条項を入れておいた方が効果的です。なお、不払の金額が大きく、かつ発注者が覚書の作成にも応じない場合には、その時点で工事を中断することも検討する必要があります。

 

2 工事完了後に不払・未払が発生した場合の対応

工事完了後に不払が発生した場合も、不払の理由をまず確認することが必要です。

そして、不払いの原因が資金繰りにある場合には、書面で支払時期を確約してもらう必要があります。また、最も重要なことは、代金の支払いを受けるまで完成した物件(建物など)を発注者に引き渡さないことです。建物の請負業者は、建物に対して商事留置権(代金の支払いを受けるまで対象物を自己の支配下に置いておける権利)がありますので、その権利を行使するのです。

不払の原因として、工事内容の不満や瑕疵の主張がある場合には、契約書の内容を確認します。この際、契約書が締結されていない、あるいは契約書に詳細が記載されていない場合には、見積書・設計図書などのほか、着工前の打ち合わせメモ、工事期間中のメールその他発注者とのやりとりの内容を確認し、契約内容を確定する必要があります。その上で、完成した物件が契約内容に沿わない点があるかどうかをチェックします。

なお、完成した物件が契約の内容どおりであり、また瑕疵もない場合には、前述したように商事留置権を行使し対象物を引き渡さないという手段を講じますが、契約の内容に沿わない点が発見された場合や瑕疵がある場合、あるいは不払の金額が少ない場合には、引き渡しをしないことによる違約金発生のリスクを考え、対象物の引き渡しを先行することも検討します。

 

3 追加工事・変更工事が発生している場合

当初の契約において定められた請負代金の支払は受けられたものの、工事途中に追加工事・変更工事が発生したことによって、請求できる請負代金が増えている場合があります。

追加工事・変更工事分の請負代金が不払となっている場合ですが、まずは追加工事・変更工事の内容を具体的に特定し、その分に相当する代金額を確定する必要があります。

ところで、工事途中に発注者との間で、追加工事・変更工事の具体的内容とその代金額まで合意ができていればよいですが、そのような合意ができていないケースが多くあります。このようなケースでは、請負業者において、発注者が追加・変更を求めた事実(あるいは追加・変更が必要だった事情)を証明する資料(打ち合わせメモなど)、追加・変更工事によって発生した増加費用を証明する資料(追加・変更工事の見積書、下請業者等からの請求書、建築工事・労務費の単価表)を準備した上で、発注者に説明をし、代金の追加支払いについて交渉をする必要があります。

 

4 請負代金をなかなか支払ってくれない場合

以上のとおりの対処を実行してもなお発注者が請負代金を支払ってくれない場合には、まず内容証明郵便によって請負代金の請求をすることになります。この際、弁護士に依頼して、弁護士名で内容証明郵便を送付するのが効果的です。弁護士が送付する場合には、発注者に対して心理的な圧迫を与えることができますし、また請負代金額を請求する法的な根拠を詳細に明示するため、説得力のある督促になります。

内容証明郵便を送付しても、請負代金の不払・未払が継続する場合には、請負代金請求の訴訟を提起することになります。請負代金請求の訴訟は、一般の訴訟に比べて専門性が高いため、弁護士に依頼することを強くお勧めします。

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