建築瑕疵で訴えられそうな方へ

建築業者・建設業者にとって、建築瑕疵(欠陥住宅)に関する紛争は避けては通ることができない問題です。建築工事・建設工事は、決まった工期の中でいくつもの工程を積み重ねていく作業である上、完成までに多数の関係者が関与するため、いつどこでミスが発生してもおかしくありません。また、請業者自身は瑕疵がないと思っていても、何年か経過後に突然瑕疵が発覚することもありますし、下請けあるいは孫請け業者のちょっとした手抜き工事によって元請業者が後々多額の損害賠償請求を受けることもあります。加えて、近年、一般のエンドユーザーである施主がより精度の高い施工を求める傾向にあることから、建築瑕疵には至らないまでも、精度の低い工事に対して、クレームが発生することが多くなっています。

そこで、以下に、建築瑕疵についての紛争に対し、どのように対応すべきか、また弁護士に依頼した場合のメリットについて説明いたします。

 

1 施主から建築瑕疵であるとの指摘を受けた段階

①まずは誠意ある対応

施主は高額な費用を支払って工事を依頼しているため、建築瑕疵を発見した際には、大変ナーバスになっています。特に物件がその施主のマイホームであればなおさらです。そこで、建築瑕疵であるとの指摘があった当初の段階では、責任の有無は別として、迅速に対応し、早期に現場確認(証拠の保全))及び施主との協議を開始するべきです。

外壁タイルが剥離して通行人に当たってしまったなど、施主以外の第三者に被害が及んでいる際にはその第三者に対する対応も忘れずにする必要があります。

 

②瑕疵(欠陥)に該当するかの判断・交渉

次に、施主が瑕疵と主張している現象が、法的な意味での「瑕疵」に該当するかを判断する必要があります。設計図書どおりに施工されているか、設計図書どおりではないとしても十分な機能・安全性を保っているか否か、経年劣化というべきか否かといった点を確認します。

この場合、瑕疵に該当するかどうかが明確な事案であればよいのですが、それが微妙な事案では瑕疵に該当するか否かを調査するために、専門家の意見を求める(鑑定)こと検討する必要があります。

たとえば、施工から10年程度が経過したマンションの外壁タイルが剥離・落下した場合に、それが施工上の問題に起因するのか、経年劣化によるものか、あるいはそれ以外の外的な要因(地震など)によるものかを判断する必要があります。その際には、剥離した外壁タイルについて専門家に鑑定を依頼し、以上の点について意見をもらいます。

以上のような瑕疵に該当するかの検討をした上で、施主と交渉を行うことになります。

 

③賠償方法及び賠償の範囲についての協議

瑕疵があることが判明し、瑕疵担保責任を負わなければならない場合には、請負業者は施主と賠償方法及び賠償の範囲について協議をします。建築瑕疵が存在する場合、法律では、施主は損害賠償請求と瑕疵修補(修理)請求ができることになっていますので、請負業者としてはお金で賠償するのか、瑕疵を修理するのかなど責任を果たす方法を施主と協議することになります。

この場合、たとえば施工の問題があり瑕疵には該当するが、その一方で経年劣化や外的要因の影響も否定できないといったケースでは、損害賠償として支払う金額や瑕疵修補の範囲を限定する交渉を行うとよいでしょう。

 

2 施主から建築瑕疵について損害賠償請求訴訟を提起された段階

施主から損害賠償責任を追及する訴訟を提起された場合、主たる争点になるのは、「瑕疵」に該当するかどうかという点です。

一般的に裁判官は建築関係について専門的な知識を有していないことが多いので、専門的・技術的な内容をわかりやすく説明する必要があります。

「瑕疵」に該当するかを証明する責任は、損害賠償請求をする施主側にあるとされていますが、請負業者側が何もしなくてもよいわけではありません。裁判所は、専門的・技術的な知識を有している請負業者に対して、事実上、施工に問題がなかったことを証明させる傾向にあります。したがって、請負業者の方から施工が問題なかったことを示す資料を提出する必要があります。

なお、裁判所によっては裁判官の審理を補助するために、専門委員という建築の専門家が裁判に関与することがあります。また、「付調停」といって調停に移行して、建築に詳しい調停委員のもとで争点の整理と話し合いを進める手続もあります。さらに、「瑕疵」に該当するかの判断が難しい場合には、建築の専門家に対して「瑕疵」に当たるかどうかの意見を聞くために鑑定を依頼することもあります。

建築瑕疵についての損害賠償請求訴訟の場合、判決で解決するのではなく、裁判の途中で和解によって解決するケースも多くあります(裁判官も和解を勧める傾向にあります。)。そのため、判決に持ち込むのがよいのか、和解に応じるのがよいのかを慎重に判断する必要があります。

 

3 弁護士に依頼するメリット

①精神的負担や労力から解放される。

建築瑕疵を訴える施主は、感情的になっているケースが多く、当事者同士が交渉をした場合には、法律論ではなく感情論が先行しがちです。そのような状況で当事者同士が交渉するのは請負業者の担当者にとっても非常に精神的負担が大きいと思います。交渉の時間や期間が長期化すれば、その労力・コストも負担になります。

弁護士に依頼すれば、請負業者の担当者がそのような感情的な対立に関与しなくてもよくなりますし、感情論を抜きにして法律論で交渉が進むことになるので、精神的な負担も軽減されます。また、交渉を弁護士に任せておけば、担当者が交渉の現場に立ち会わなくてもよくなりますので、時間的なコストも削減できます。

 

②より有利な交渉ができる。

請負業者にとって施主はお客様ですから、自らの主張を強くすることができず、施主に押し切られてしまうケースがよくあります。弁護士に依頼をした場合には、法的な理由もなく「押し切られてしまう」ことは皆無になります。

また、弁護士は「瑕疵」に当たるかどうかについて、請負業者から専門的・技術的な事項を聞いた上で、法律や裁判例を調査して判断をします。また、必要に応じて、依頼者である請負業者に調査を依頼したり、専門家に鑑定を依頼したりして、施主の主張が法律上の「瑕疵」に当たるのかを分析します。請負業者の方は、もちろん建築についての専門的・技術的な知識を持っていますが、弁護士は請負業者にとって有利となる材料を探し出し、それをもとに法的な基準を組み立て、施主と交渉することができます。

 

③より有利に訴訟を進めることができる。

建築瑕疵に関する訴訟は、建築の専門家ではない裁判官に対して、請負業者の主張をわかりやすく説明するという作業が重要です。弁護士も、建築の専門家ではないという点では裁判官と同じであり、どのように裁判官に説明をするのが効果的であるかということを理解しています。

また、弁護士は、その訴訟に対して裁判官が持っている問題意識を理解し、それに適切に対応して証拠提出をしたり、主張を組み立てたりすることができます。さらに、重要な争点とそうではない争点を区別し、重要な争点に重点を置いて訴訟を進めることができます。建築瑕疵に関する訴訟は、瑕疵の主張が多数箇所に及ぶことが多いため、重要な争点か否かの見極めが必要になります。

加えて、建築瑕疵に関する訴訟は和解で解決するケースが多いのですが、弁護士が関与することによって判決の見通しをもとに請負業者にとって最も有利な条件による解決を目指すことができます。

 

 

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